ドイツ系移民のアメリカ人の特徴

PA(ペンシルバニア)の中でも私の住む地域は、
ペンシルバニアン・ダッチと呼ばれるドイツ系移民の多い土地です。


Dutchとは普通、英語ではオランダ人を表す言葉ですが、
一説によるとドイツはドイツ語でドイッチェ(のような発音)なのでそれが訛ったのではとも言われています。
ペンシルバニアン・ダッチとは、移民そのものを表す場合と、
ペンシルバニア・ドイツ語を表す場合があります。


私がこちらに来て、相方の家族・友人を含め多くのドイツ系移民の人達と過ごしていますが、
日本に居る時も私も地方都市出身者で、決して都会の人間では無かった物の、
アメリカに来てのカルチャーショックの多くは「超田舎体験」(それでもまだマシということを後から知ることになるのですが)と、この「超ペンシルバニアン・ダッチな価値観」でした。


何せ、いまやカリフォルニアでは、
数年後にはマイノリティと呼ばれる人が多数派に回るであろうという時代に、
私の住むあたりでは、96%白人という異色の数字を未だに打ち出している地域です。
今住んでいる街の人口、およそ1万5千人弱、アジア人はその0.14%とのことですので、
たまに見かけるのがカンボジア人、中国人・・・ですので、恐らく私は唯一の日本人だろうと思われます(笑)
(今、15,000人の0.14%をちなみに計算してみました。21人(笑)。多分、私はこの街の全てのアジア人を既に知ってると思われます)
カウンティ(郡)で調べてみると、ようやく見慣れた数字が出てきて49万人だそうですがかなりの数の自治体を合わせて2,548 k㎡、人口密度192人/k㎡。(ちなみに、私の故郷の人口密度332人/k?。←これでもかなり日本では土地はたっぷりある地域の田舎です。)


上記のようなこともあり、私には何もかもが初めてづくし、
文化も違うし価値観もまるで違う場所に移り住んだわけです。
のんびりしてますし、農業も盛ん。
地元の高校は一つ、でも近隣の同じくらいのサイズの街との交流もよくあるので、
それを合わせると大体3〜4つくらいの高校の卒業生で占められていたりする為、
日本に居た頃には在り得なかった、
「○○知ってる?ほら、あの△△の兄」とか、「この前まで■■とデートしてた」
「私の何年前の卒業年度の・・・」
などという情報でどこの誰かが特定できてしまうような・・・。
義妹と義母の会話なんて、大方「どこの誰が、誰それと結婚して〜」とか「あの人達は子供が産まれた」
・・・という地元のゴシップが多くて、何も判らない私はただ聞いてるだけでした。
(というか、5年経った今でも相方の友達くらいしか知らないし、興味も無いので参加はしないし、多分これからも知らな〜いで通すと思います。)
こういう小さい町に住んでると、それが普通なんだろうなと思って聞いています。


娯楽も少ないので、家でご飯作って食べた方が美味しいしバラエティに富んでるし、
家で飲めば、飲酒運転することもないし・・・という状態(笑)
それか、近くの大きな都市(ここからだとフィラデルフィアやアトランティックシティ)に出かけるか・・・なので、お出かけの楽しみも減ります。
学生の私に取っては、ありがたい環境ではありましたが、刺激も少ないので、
年に数度、相方と共に行くバケーションで、
都会を満喫して普段は田舎という生活です。


田舎生活の良い面といえば、犯罪大国アメリカでは有り得ないほどの安全さでしょうか。
我が家は、一応住宅地にあるので、お隣ご近所もすぐ側、コンビニも目の前というロケーションですが、
ここ5年、危ない目には一度もあったことも無ければ、
物騒な噂も、年に数回聞く程度・・・という何とも長閑な所です。


義父母の家には広大な土地(馬まで居る)がある為、家庭菜園(というにはかなり大きい)と果樹園を持っており、
新鮮なお野菜が土付きで貰えて、取れたてのフルーツを頂けます。
根っからの狩猟民族である義父は、ハンティングもする為(動物愛護の皆様には大変申し訳ありませんが)
野趣溢れる本格的なジビエにもなるであろう、数々のワイルドなお肉を頂く事も多々あります。
言うなれば、日本で秋田あたりのまたぎの家で「猪鍋」や「鴨鍋」を頂くようなものでしょうか?
そういえば、鴨とクレソンのお鍋は、確か「失楽園」で出てきたんですよね(あら脱線)


そうですね、言うなれば「現代社会に大草原の小さな家のチャールズ父さんが居る」ような生活を
思って頂ければ、判りやすいかと思います。
最初は、そんな生活には全く縁の無い私にしてみると、
それはそれは驚きの連続だったのです。


価値観はというと、相方の家族、そしてその友人達、親戚を見ている限り、
家族という単位が物凄く重要な位置を占めています。
そして、お金にはかなりうるさいですね。
割引率にもかなり目を光らせていますし、「Deal」という言葉をこよなく愛しています(笑)
私と相方は、結構その辺が無頓着というか、しょっちゅうクーポンを持ってても忘れるタイプ。


義父は拘りの男で、自分の気に入った物であれば、高かろうが買いますが、
買う物は主に、「ハーレー用品(グッズも含む)」「車」「工具」「農耕用機械」など。
大草原の小さな家のチャールズ父さんが、背中に猟銃背負って、ハーレーに跨る姿を想像して頂ければ、より一層義父のイメージに近づきます。)


義母はデコレーションが好きなので、家の中のインテリア関係に拘ります。
義妹夫婦は、買い物大好きで、あらゆる広告・情報に目を光らせているタイプ。
ついでに言うと、結構な収入を得ている人達ですが、
「買い物するなら頭を使え!」という凄い執念に近い拘りを持っています。


そしてお金の一番の使い道は「家」と「車」です。
今は数ヶ月前のガソリン価格急騰や昨今の経済不安を理由に日本車も人気がありますが、
この辺りではドイツ車が人気です。
VWのジェッタ、パサートは若者向け、ベンツ、BMWも多いです。
日常生活、車が無いとどこにも行けないという場所ですから、
大事ですし、そこにステータスを求める傾向があるんでしょうね。


私と相方は、特に大きい家にも興味が無く、庭も狭い方が手間もかからないという理由から、
豪邸に対しての関心が薄いのですが、(家庭菜園とお花が少し植えられれば満足)
この辺りの人達にしてみると、世間の波に逆らって
庭付き大豪邸を夢見る人も多いです。
私にしてみると、8ベッドルームとか聞いただけで、
掃除を想像してしまう時点で既に駄目なんですが、
豪邸建てるなら、お手伝いの人に来てもらえるくらいの度量が無いと
優雅になんて暮らせないと思う、私はやっぱり小市民ですね(笑)


そして、驚くべきはその「割り勘」に関する考え方。
早くから「自立しなさい」と育てられたせいなのか、
家族で食事をすると、大抵は義父母がご馳走してくれますが、
そこに誰か家族外の人も同席する場合(例えばこの場合、相方の友人カップルだとします)
突然割り勘になります。年上だから多く払うという訳ではないわけです。
まぁ、これは私たちが既に相応の年になってるからとも言えるのですが、
決して他人の分を払う義理は無いという感じです(笑)


日本だと、年長者がわりと「俺がここは・・・」という光景をよく見て来た私にしてみると、
最初はかなりの衝撃でした。
子供同士の場合でも、妹夫婦、弟などと一緒に食事する場合、
決して相方が「俺がここは・・・」とは言わないので、
「えぇ〜っ。あんた兄なんだから、ここはご馳走してあげたら?」と言ったら、
「そういうのは日本だけの話だ」
と言われた事がありました。
その代わり、家のバーに置いてあるお酒は、遊びに来た人には大盤振る舞いする事も多いので、
気前がいいんだか、せこいんだか判りません(苦笑)


これはペンシルバニアに限ったことではないのかもしれませんが、
密かに、英語では割り勘を意味するDutch Treatという言葉は、
ペンシルバニアン・ダッチから来てるのでは?とすら思ったほどです(笑)


ということで、アメリカの小さな田舎町での生活というのは、
5年経っても未だに驚きの連続なのです。
カルチャーショックの時期は既に過ぎましたが、
「そういうもんなんだな〜」という目で見る気持ちがないと、大変だとは思います。
・・・と日本の田舎者がアメリカの超ド田舎に来て思うこの頃です。