日本人の気前の良さを体験

相方は旅先で、地元の人と話しが出来たりするような
居酒屋やバーが好きである。
小料理屋体験で、お腹を満たしたがまだもうちょっと飲みたいと言うので、
ホテルの近くの私が好きだったバーに連れて行った。
カウンターで飲んでいると、まず前職場の友達に偶然遭遇し、
「いや〜やっぱり地元は狭い」などと言っていると、
後から来たお客さんが注文した日本製ウィスキーに相方が気づき、
バーのマスターにそのウィスキーについて質問をした。
その次の瞬間に、その注文したお客さんの一人が、
「これはね〜いい酒ですよ〜。マスター、この人達にも一杯お作りしてっ!」
前の店での酒の勢いもあったと思うが、知らない人にでもご馳走してしまうこのノリ。
実は、その後の話しで判ったのだがこのグループは、
某ワイン製造・卸メーカーの会社のグループの、お得意様接待の一行だったのだが、
その内の一番のボスが、気前の良い方で、
その後も、私達が数日後に挙式を控えていると知るや否や、
「何っそれじゃお祝いしないとダメじゃないですかっ!マスターっ、シャンペン用意してっ!」
と、シャンパンを開け、みんなで乾杯。
部下には、「おいっ、うちのワインをどっかからもってこい!」と指示をして、
部下は、ぱぱっと店を飛び出して行ってしまった。
相方と相方の友人は、日本人ビジネスマンの「体育会系の上下関係」を目の当たりにして驚き、
そして、数十分後、部下の方は、
私達の為にワインを調達してきてプレゼントしてくれた。


偶然、このバーに居合わせただけで、わずか45分弱で
高級ウィスキーとシャンパンとお土産にワインを頂いてしまった私達。
「ひぇ〜日本ってすごい国だよな〜」
とびびりつつも感激する相方の友人(初来日)
このバーは、普段はしっとり大人のバーで、マスターはこだわり抜いたお酒のセレクションに、
確かな腕を携え、細やかな気遣いと美しいサービスが自慢のお店なのだ。
一つ一つアイスピックで削られたロックアイスが、
ぴかぴかに磨き上げられたロックグラスの中で光り輝いている。
ここでお通しとして出されるピーナッツ一つとっても美味しい。
そしてとてもびっくりしたのは、
私が最後にこの店に来たのは5年前だったにもかかわらず、
マスターは私のことを覚えていてくれたことである。
しかも、私がどの席に座ったのかということまで。
プロのサービスを久々に見た気持ちになった。
いつ来てもいつもと同じいい気分になれるサービスというのは、
実はとても難しいことで、
私がサービス業に従事していた頃、目指していたことだった。
このお店に来ると、いつも私はとってもいい気分で帰ることが出来る。
そのことだけで、マスターのサービスは一流だなと思えた。


良いサービスを提供することを極めたいと思う職業にとって、
一つの事に付加価値をいかに付けるかはとても重要なことで、
それによって、他の店より多少高い金額を出してでもまた来たい、
そう思わせることがとても大事なことなのだ。
このマスターは、久しぶりに私のサービス業魂を思い出させてくれた。
日本人の「良質な物に対するこだわり」や「きめ細かい気遣い」
こういうことを、アメリカから来た一行も感じてくれればいいなと思った。
それは、父のお気に入りの小料理屋さんでの、あったかい歓待であったり、
このバーのマスターのさりげないこだわりであったり、
盛岡の夜で彼らは何かを感じてくれたに違いない。