ロマンチック感は全然無し

相方と私は、つい先週末遂に「結婚」というものについて話し合った。
付き合ってもう4年が経過し、私のビザもあと1年で切れるという段になり、
当然今後の話をしなくてはならなかったのだが、
相方は、何しろ「出来ることなら結婚はしたくない主義」であったため、
彼を無理強いしてまで、私も結婚するのは・・・と思っていた。
当たり前のことだが、結婚というのは相互合意の下に、
お互いにとって必要があるからすることだと思っていたからである。


元々、私は結婚は書類上の手続きなので、お互いの気持ちが通じていて、
それが心地よければ、してもしなくてもいいと思っていた。
がしかし、国際カップルにとっては、一緒の国で暮らすには、
ビザの問題がいつも立ちはだかっている。
今回の私と相方の場合も、「これからも一緒に生きていく相手だ」
という認識がお互いにあるのだから、合法的に一緒に居る為には、
この問題をクリアしておかなければならない、
それは、私が渡米した当初から判り切っていたことなのだが、
何しろこの、「独身を満喫したい。束縛されない人生がベスト」
という相方の気持ちを判っていたので、
私も少々及び腰の話し合いが多かった。
「嫌な物無理にさせるのは良くないよな」と思っていたのである。
遠距離から始まった私達の関係について、結婚とは大きな決断なので、
よーく見定めなければという気持ちもあった。
このことに関しては、私も相方もかなり慎重派であった。


がしかし、やはり現実問題として、ビザの問題というのは、
いつも私の頭の中でぐるぐるしていた。
一体、私は学校を卒業して、その後のプランをどんな風に考えればいいんだ?
出口の見えないトンネルというのは、予想以上に辛い物である。
暗い場所で、一筋の光を見つけた時、
人はそれを希望と感じ、それに向かってがむしゃらに走れるものなのである。
しばらく、私には、暗闇の中に壁があって、
ちょっと背伸びするとどうやら壁の向こうには光があるらしい気配を感じる、
そんな心境が続いていた。
「あるのかも、でも、もしかしたら気のせい?」
という状態である。


いくら相方が刹那主義者のような物言いをしていても、
段々に、ちょっとした近未来についての目測のような発言の中に、
私のことも含まれることが目立ち始めた。
同居人が居なくなってから、別の入居者の話を断った時も、
割とすんなり私の希望について聞いてくれた。
・・・・言わずとも通じるを理想とする相方にしてみれば、
既に、私を将来一緒に暮らす者として扱ってくれているようにも見える。
(言葉じゃなく態度で示せよという、80年代のアイドルの歌に出てきそうな話である)


今ならもしかしたら、ちゃんと話が出来るかも、何故かその夜そう思って、
話し始めた、私と相方。
実は、相方はその日、友達としこたま飲んでいたので、かなりご機嫌モードだった。
相方と、最初は今後の家賃や生活費について話していたところで、
チャンスは巡ってきたのである。


私「・・・で結婚についてどう考えてるの?」
相方「え、必要ならばしてもいいよ。」
(いつもの答え)
私「私は、お互いに一緒に居たいという気持ちがあるならば、なるべくお互いの負担を軽くして楽に暮らして行けた方が、今後の為にもいいと思うんだけれど。あなたは私とこれからも一緒に生きていこうって思ってるわけ?」
相方「思ってるよ。いいよ結婚しても」


・・・以上、かいつまんで実況させて頂きました。


ということで、結果的には、私がまたもやプロポーズをした形になってしまった(苦笑)
今まで何を話し合っていたのだ?と思う方も多いかもしれないが、
彼の結婚に対する懸念や偏見を覆す為には、大きな信頼関係が必要だったのである。
「そんなこた、付き合ってるカップルならとうに話してることだろうに。」
という声も聞こえそうだが、
私達も事あるごとに、触れてきたのだが、私の英語力の問題や、
彼のかたくななこだわりがあったりで、
あんまりいい話し合いにならなかったことが多かったのである。
今回、初めてはっきりと「結婚する」意志を聞いたので、
結婚の手続きを始めることにした。


驚いたのは、酔っ払いながらも
「オレは、前にも話したけれど、結婚式とかそういう華々しいことはする気は無いからね。ラスベガスとかアトランティックシティとかで結婚すればいいと思ってるし。」
などという、具体案が相方から出されたことである。
「オレ、君の両親が望むなら、日本でだったら結婚式挙げてもいいなぁ。」
私は、結婚式なんぞ、ぜーんぜん考えてなかった。
というか、一生に一度のことなので、ドレスは着たいなぁとは思ったので、
記念写真だけは撮ろうと決めていた程度である。
結婚後、日本に戻ることがあれば、その時にでも集まれる親戚の皆さんに、
お披露目の食事会程度のことはやってもいいかなぁとか、
非常に地味なことを考えていたのである。
むしろ、「ネットでよく言う「膨大な書類」「山のようなペーパーワーク」をとっとと終わらせないといけないんだよなぁ。」という非常に実務的なことばかりが、
頭をよぎっていて、ロマンチックに、
「愛してるよ。これからもずっと一緒にいようね」
なんて、甘い囁きなんて全然無かったのである(笑)
指輪も無いし、婚約なのか?これは?とも思うが、
一応、お互いに結婚の意志を固めたという意味では、
私の中では事実上の婚約なのだと思う。
相方は、「オレをフィアンセとは呼ぶな」と言っていたが・・・。
そういう社会的な呼称で呼ばれるのが嫌らしい。
なお、「私の夫」「主人」「ハズバンド」いずれも嫌なんだそうで。
ま、しょうがないわね。嫌なんだから、相方はこれからも相方ってことで(笑)


ということで、一応、私と相方は結婚に向かって歩み始めた、
というところである。