わらしべホテルルーム

私達のホテル予約は、実は「Exective Floor」の予約で、
チェックインも、高層階のラウンジでと案内され、
予約した本人も「あら、そんなことになってるし。」と、思いつつ、
44階に上った。
私達は、荷物だけ置いてすぐ観光に出かけるつもりだったが、
「よろしいですよ、今お入りになれます」と、
Exective Floor のFrontのジョバンニ(仮名)は言った。
母達は、ラウンジ寄りのツインで、そこに入り、
妹と私は、同じフロアでもフロア中ほどで、少し離れていたので、
「じゃ、また後で〜」と、自分達の部屋に向かって、
カードキーでドアを開けたら、
明らかに、滞在中の部屋であった。
・・・ホテルで働いたことがあるので、
状況はわかっている。
こういうミスは、たまにあるのである。コンピューター制御されていても、
人的ミスが重なるとこういうことがある。
しょうがないな〜ジョバンニ(仮名)。
と、フロントに戻り、その旨を伝えると、
「す・・・・すみません!」
「いいですよ。私も予定の到着時間より早く来たから、
母達の部屋に荷物だけ置いて出かけますから。
夕方戻った時に、新しい部屋を用意して下さい。」
私はこういうところは、まだ寛容である。
「私、今日は夜までおりますので、必ずっ!」
平謝りのジョバンニ(仮名)。
その後、妹と私は母達の部屋に行き、荷物を置き、
妹がバスルームに入ると、すぐさま
「この部屋もっ!」
と言って出てきた。
・・・まだ毛が落ちてるし、タオルも補充されてはいるものの、
整えられていない。
どうやらチェック前の状態で通されてしまったらしい。
・・・これもね、判るんだよなぁ・・・と思いつつ、
「あることなのよ・・・。」と呟く私を横目に、
妹は、「私、ちょっと言ってくる!」と、
今度は妹が単身、ジョバンニ(仮名)に文句を言いに行った。
頼もしい・・・妹よ。


ジョバンニ(仮名)はかなり焦った様子で部屋に来て、
「大変、申し訳ございません!すぐに代わりのお部屋を!」
と言って、ダッシュでフロントに戻り、
次の部屋の鍵を持ってきた。
次に通されたのは、なんとスイートであった。
レギュラーのスイートで、バスルームも二つあるし、
母達は、「あら〜、いいのかしら?」といいつつ、
喜んでいた。
ジョバンニ(仮名)は、
「まだお掃除が終了していませんので、もう一部屋は先ほどの通り、
お帰りの際にご案内しますので!」
と、平に謝って退室した。


私達は、すぐご近所のMOMAに行き、
その後、ホテルのイタリアンで食事をして、
今日のメインイベント、ブロードウェイミュージカルの為に、
着替えにホテルに戻った。
ジョバンニ(仮名)は、まだフロントで仕事をしており、
すぐに私達の帰還に気がついた。
「今、お部屋までご案内しますっ。
実は、お母様達とコネクションルームがご希望とのことで、
お隣の部屋をご用意できるのですが、
何分クイーンサイズのベッドが一つなので、
そこをシェアしていただくか、
エクストラベッドをお入れするかで対応させて頂きたいのですが・・・。
もしツインをどうしてもということであれば、
離れたツインしかご用意できないので・・・。」


もちろん、コネクションルームであれば、部屋の中で行き来出来るので、
言うことは無い。
とりあえず、最初の提案の部屋を見せてもらうことに。
「こちらでございます。」
と言って通されたのは、
プレジデンシャルクラスのスイートであった(笑)
部屋の正面には、でっかいライティングデスク。
左手には、8人掛けのダイニングテーブルとバー、
右手には、応接セットと大きなテレビ。
ベッドルームは隣室で、巨大なベッド。
バスルームもキチネットもついている。
・・・エグゼクティブ・ツインが
ここまでアップグレードしてもらえれば、
ま、いいか。
ということで、「いいですよ。この部屋で。」
と、了承して、私達はスイート二つをコネクトして使うという、
なんとも贅沢な滞在になったのである。


初めてのブロードウェイのミュージカルは、
ロングランで、母達も既に知っている
オペラ座の怪人であった。
マジェスティック・シアターは、ブロードウェイ初演時、
アンソニー・ロイド・ウェバーの作品の為に作られたという劇場。
席の案内人は、客席の至るところに居て、
てきぱきとした対応で、どんどん人を席に誘導する。
席からの眺めも上々で、開演した。
疲れが出る頃、そして観客席は暗いということもあり、
眠気の誘惑に打ち勝つのに必死だった人も居たが、
ショーは素晴らしかった。
やっぱり主役のファントムの歌声は心に響いたし、
生のオーケストラが見えるのも良かった。


その後、お決まりの
「エンパイア・ステイト・ビルディングでの夜景展望」
を見に行き、
風が強かったが、
高層ビルから眺めるNYCの「100万ドルの夜景」を見て、
ホテルに戻った私達。
母達は、NYの乱暴なタクシードライバーの運転に
ひやひやし通しだったようである。
これもある意味、NY名物だったりして。
(でも昼間の人は丁寧だったけれど。夜のみ?)


さて、ゴージャスなスイートに帰ってきた私達。
冷房に弱い私は、出掛けにエアコンのスイッチは消して出かけた。
なのに、天井から物凄い音と共に冷たい風が吹いてくる。
おかしい、とコントロールパネルを何度も確認する。
母達の部屋は、快適のようなのだが、
アメリカではお決まりの「歯ブラシが無い」ので、
フロントに電話をして、歯ブラシを持ってきてもらうことにして、
その際、客室係に冷房の消し方を聞こうと思っていた。
「はいっ、すぐに参ります。」という返事を聞き、
のんびり待つ私。


部屋はどんどん寒くなってきた。
備え付けの毛布を取り出し、腰に巻いてみたり。
歯ブラシは来ない。
待つこと30分。フロントに催促の電話をしてみる。
「あ、今向かっています。」
蕎麦屋の出前の返事かっ!とむかつきながら、
「あの、ついでにエアコンも操作板で消してるのに、
止まらないんですけれど、
これも何とかしてください。寒くて大変なんです。」
という私に対し、
「では、部屋に向かった者に説明させますので。」
・・・・で、その「部屋に向かっている」蕎麦屋の出前を待つこと、
更に20分。
ようやく来た歯ブラシを持ったインド系の男性に
「あの〜これ、どうやって止めればいいんですか?
寒くて死にそうなんですけれど。」
私がいじりまくったコントロールパネルを見ても切ってあるし、
「本当にこれは寒いですね。すぐに機械担当者に来させます。もう少々お待ちを!」
と、そのインド系の男性は、立ち去った。
またもや待つこと、今度は10分。
やっと、その担当者が来て、
「あぁ、これは外ですね〜。」
と、部屋の外にあったらしい、
作業板を開けてやっとこの超強力なエアコンを止めてくれた。
判るか〜〜〜っこんなもんっ!
「この部屋は、よくパーティとかで使われるんで、その時の大人数用に、
最近この強力エアコンを取り付けたんですよ。
寒かったでしょうね。もう大丈夫です。」


その間、人が来るというので、着替えも出来ずにずっと待ち続けた私。
その後、熱いお風呂に入って、ようやくベッドに入れたのは、
夜中の2時過ぎであった・・・。


アップグレード、良かったのか悪かったのか。
わらしべスイート、最高にラッキーのはずが、
この冷房の件で、一気に気持ちはダウンしている。
ジョバンニ(仮名)どうしてくれるのよっ!


翌朝の朝食は、エグゼクティブ専用ラウンジで頂いた。
ま、美味しかったが、コンティネンタルのみっていうのは、
私は少々不満だったりして。
チェックアウトの際、一応昨晩の一件を丁寧に伝えてみた。


「色々お部屋にトラブルがあって、
アップグレードして頂いたお心遣いは感謝します。
ただ、使わせていただいたスイートのエアコンは、あまりに寒くて、
しかも、使い方についての何の説明も無く、
それについての問い合わせの対応も、
1時間以上待たされての解決でしたので、
非常に辛かったんです。部屋の外での調節では、
さすがにこちらも解明のしようがないですし、
電話でも教えて頂けなかったので。
今後の参考に、あのお部屋をご案内する際には、
その辺も考慮された方が宜しいのでは?」

と話したら、フロントの女性は、かなり冷や汗をかいていた。
本来ならば、マネージャー出せって言うべきだったのかもしれないな〜、
と今は思うのだけれど、
争いごとが好きではないのもあったり、次の予定が詰まってることもあったりで、
ついつい小心者の私が見え隠れしてしまった


ということで、メトロポリタン美術館も見て、
夕方の電車で、帰路についた私達。
ちなみに、帰りの電車も激寒だったので、
アメリカの「超寒い冷房」も体験した母達。
珍道中ではあったけれど、
満足度もそれなりだったことであって欲しい・・・。