最近の私の葛藤

私の母は、それほどスパルタでもないけれど、
それなりにきちんと躾けてくれた方だと思う。
家に居る時は、ばたばた歩かない、ドアを音を立てて閉めない、
立ち居振る舞いのことなども、思えば色々言われていたものである。
日本に居れば「そんなの普通でしょう。」と思って、
大して意識したことも無いようなことでも、
外国に来ると、そんな小さな当たり前は当たり前じゃなくなる、
これが、いわゆるカルチャーショックであり、文化の違いだったりする。


それでも、自分一人で暮らしていたらそんなことも気づかず、
ずっと我流でやっていけるのかもしれないけれど、
誰かと同じ屋根の下に住むとなると、
毎日の小さい事なので、気になりだしたら結構止まらない。


私は元々大きな物音が苦手、というのは何度も書いているんだけど、
今も、ルームメイトがいきなり物凄い勢いで掃除を始めていて、
一体、何をすればそんなにでかい音が・・・・というくらい、
「どかん」
「がつん」
「がっしゃん」
(どうでもいいけれど、日本の擬音語ってすごく便利ですねぇ。英語だと、このバリエーションはとっても少ない。相方のばしーっと叩かれたみたいな表現は、いつも「ゥワーンプ」のみである。英語でどう書くのかも判らない)
という音が聞こえる。
こっちの背筋がぞわっとしそうなくらいの勢いなのだ。
意味も無く
「うぁぁんごめんなさい。もうしません。」
と謝りたくなるようなこの感覚。
だめですね。私。


でも、私は普通に静かに過ごしていても、
家の中でばったり遭遇するたび、
「ひぃぃいいっ」と言われて驚かれているのである。
ホラー映画の見すぎでは?と思うほど、彼女は恐怖の世界に生きているみたいで、
こうなると、
「ある程度物音立てて行動した方が、私がどこに居るのかわかって、
彼女も怖くないのかしら?」
などと思ったりして、
なるべく、ドアの開け閉めにちょこっと申し訳程度に、
「ぱたん」と音を立てるようにしたりしてみたりした。


すると今度は、相方である。
普段は彼の足音もなかなかのもんなのだが、
ある夜、もう寝ましょという時間に、
私はバスルームから自分の部屋に行き、お肌のお手入れをして、
ベッドルームに向かうべく、ドアを「ぱったん」と閉めた。
ちょっとたてつけも悪いので、一生懸命引っ張らないと、
きっちり閉まらないので、ぎゅっぎゅっと引っ張りつつである。
すると、眠そうな相方が、
「あのドア、今週直すね。君がドアを閉めたら、ここの壁がきしんだよ。」
アメリカ人は何でも大げさである。私のこのか弱い腕力で、どうやれば、家の壁がきしむ程の大きな音が出せると言うのだ。絶対にそれはこの家がおんぼろなだけである。)
「あぁ、あのドア、ちょっとぎゅっとやらないと閉まらないからねぇ。」
と言い訳すると、
「っていうか、ドアの反対側に物置いてるからじゃない?」
と、なんとも的外れなことを言う。
言っておくが、ドアは内開きである。つまり、閉めるときは引っ張っているので、
部屋の中に置いてあるものがひっかかる訳ではないのである。
おいおい、大丈夫か?相方!


あちらを立てればこちらが立たずである。
やっぱり私は、今まで通り、音を立てずに生活して、
「ひぃっ」と、ホラー映画のお化けのようなリアクションをされていればいいのか、
私にはちょっとよく判りませんわ。