鍵屋の格闘

あとは鍵屋が来るのを待つばかり・・・。と駐車場で、
ずーーーっと立って待っていた。
蕎麦屋の出前と同じで、今から2〜30分で行きますは、
その倍を見たほうがいい、アメリカ時間。
予想通り、鍵屋は、50分後に私の車の前に現れた。
「まいど〜。」
ヒスパニック系のおじさんが、手馴れた手つきで作業を始めたのだが、
これが、すごく、いえ、とっても原始的っていうか、
下手すると、車を盗みに入ってるような作業なのだ。
助手席の窓のパッキン部分にむりやり木の杭を差込み、
そこに、空気で厚さを調整出来るクッションを差込み、隙間を作る、
そして、プラスティックの板(ワイシャツの芯みたいな形)に
輪になった太目のゴムと、それを引っ張るもう一本のゴムがついている。
要は、その輪を車のロック部分(ドアに押し込んでロックする方)に引っ掛け、
紐の方のゴムで引っ張り上げるという、職人技的な技法である。


が、しかし、この方法では上手く行かず、次には、
ドアの取っ手についているオートロックのボタンを押そうと、
太目の針金で、先が曲がっているのを持ってきて、
そこの隙間から格闘していた。
それも上手く行かず、
「鍵はどこに入ってます?」と聞かれた。
「鍵は・・あの大きなかばんの前のポケットに入ってるはずです。」
え??何??と思った。
数十分の格闘の末、職人は、なんと、
私の鍵を引っ張り出すという方法を試みるというのだ。
既に助手席側のドアのパッキンがだらーんとしている。
何と言うことなんだ。
と思いつつ、運転席側に移り、職人は、また格闘する。
そして、その長い針金を器用に操り、
職人はやっと私の鍵を引っ掛けるのに成功する。
その間、私のその重たいバッグを引き上げてみたり、角度を変えたりしながら、
前ポケットの中の鍵に到達したのである。


鍵が出てきた時は、「うわ〜〜〜、ありがとうございますぅ。」
と言ったが、ふと見ると、私の助手席側のドアは、相当な苦闘の跡が見える。
「あ、ドア、直しておきますね〜。」と言って、
手馴れた様子で、パッキンを元に戻し、精算をして、
職人は去っていった。1時間の格闘を終え、職人は、
「いや〜、こんなに時間かかっちゃってすいませんでしたね〜。」
と言っていた。
本当は、あのロックを引っ張り出すで、大抵はことが済むんだそうだ。
ということで、私の車のセキュリティーは、
実は結構すごいということに、気づくのであった。


そして、もう一点。
私の車のゴミ箱がいっぱいになっているのに気づく。
言い訳するならば、水のペットボトル(飲み終わり)で、
ぎゅうぎゅうになっていたのだ。
きゃ〜恥ずかしいったらもう、である。
何しろ、その職人の格闘中、友達が通り過ぎては、
「大変だねぇ。」と車の中をのぞいていたのである。
ごみは散乱していないものの、ゴミ箱はいっぱいであった。
あぁ、もう既に私は、
「あともう一回は履けるでしょう」と思って、
擦り切れ寸前の靴下を履いてしまった日に限って、
お座敷の居酒屋に行ってしまった気分である。


実に、私がドアを閉めて青くなってから、二時間が経過していた。
その後、図書館に駆け込み、一生懸命記述部分のおさらいをして、
30分後、ラーニングセンターで振り替え試験を受けることが出来た。
その後、そのまま仕事をして、
6時過ぎ、やっと学校から出ることが出来た。


・・・あぁ、なんて長い一日。おまけに風邪気味でだるいのと、
お昼ごはんを食べる暇が無かった
(シリアルバーをかじってしのいだ)ので、
猛烈にお腹が空いていた。
今日は相方も居ないし、適当に食べようと思い、
買い物をして家に帰ると、相方の車が正面に止まっている。
・・・まじですかい?
最近、この人、こういう予想外行動が多いんですけれど・・・・。
でも、もう食べたというので、私は心おきなく、お茶漬けを食べることが出来た。


ビタミンCと、日本の風邪薬を飲んで、明日もまた早起きなので、
今日は早く寝ることにする。
相方も仕事を家に持ち帰って、珍しく図面をにらんでいるので、
こんな日は話にならない。


ということで、冷や汗たっぷりの一日なのであった。
今日の言葉。
「英語で、えんじ色はマルーンと言うらしい。」
「自分の車のセキュリティーを確かめたいならインロック
(って、今時は、皆リモートのキー使ってるから、
私のような馬鹿な真似をする人は少ないらしいんだけど)
そして、「車の中はいつもきれいにしておこう」
・・・何だか何かの標語みたいになってきた。
もう寝ます。